昭和22年(1947年)、文部省から発行された「あたらしい憲法のはなし。8.国会」をまとめてみました。「あたらしい憲法のはなし」はパブリックドメインなので、アマゾンや青空文庫などで無料で読むことができます。ぜひ、原本を読んでみることをおすすめします。
憲法について学ぶきっかけになれば幸いです。
国会議事堂
みなさん、国会の議事堂をごぞんじですか。
あの、白い、うつくしい建物に、日の光がさしているのをごらんなさい。
あれは日本国民の力をあらわすことろです。
主権をもっている日本国民が国を治めてゆくところです。
当時、中学1年生の子どもたち(生徒)に向けられて書かれた文章
国の仕事
国の仕事はとても多いですが、これを大きく分けるとだいたい3つに分かれます。
「立法」と「司法」と「行政」です。
立法 − 規則をつくる(国会)
国の仕事の第一は、国のいろいろな規則をつくる仕事です。これを「立法」といいます。
立法は、国会が受け持っています。
司法 − 争いごとを裁いたり、罪の有無を決める(裁判所)
国の仕事の第二は、争いごとを裁いたり、罪があるかないかを決める仕事です。これを「司法」といいます。
普段、裁判といっているのは「司法」のことです。
司法は、裁判所が受け持っています。
【裁判所について詳しく】
行政 − 立法と司法を除いたしごと
国の仕事の第三は、「立法」と「司法」を除いたいろいろな仕事です。これらをひとまとめにして「行政」といいます。
行政は、「内閣」と、その下にあるたくさんの「役所」が受け持っています。
【内閣について詳しく】
国会とは?
「国会」は、主権を持つ国民の代わりになるもので、国民の代わりに国の仕事のやり方を決めるところです。
民主主義は、「国民が皆で、皆のために国を治めてゆく」ことですが、国民の数はとても多いため、誰かが、国民全体に代わり、国の仕事をするより他はありません。
この国民に代わるものが「国会」です。
国民は主権を持ちます。
あらためて。国民は、国を治めてゆく力、「主権」を持っています。
この主権を持つ国民に代わるものが国会です。
このようなことから、国会は国で一番高い位にあるもので、これを「最高機関」といいます。
国会は、国の最高機関です。
国会は、国で一番高い位にあり、国の最高機関です。
「機関」とは、国の仕事を色々分けてする役目のあるもの、という意味です。
国には、「国会」の他に、いろいろな働きをする機関があります。「内閣」や「裁判所」も、皆、国の機関です。
その中で、国会は、一番高い位にあります。
その理由は、国民全体を代表しているからです。
【内閣について詳しく】【裁判所について詳しく】
国会には2つの議院があります。(二院制度)
日本の国会は、「衆議院」と「参議院」との2つからできており、その一つ一つを「議院」といいます。
そして、「衆議院」と「参議院」のように、国会が2つの議院からできているものを「二院制度」といいます。
(国によっては、1つの議院しかないものもあり、これを「一院制度」といいます)
多くの国の国会は、2つの議院からできています。国の仕事はこの2つの議院が一緒に決めます。
第一院と第二院
日本の国会は「二院制度」です。衆議院と参議院があります。
2つの議院が必要なのはなぜでしょうか。
それは、「バック・アップ」をするためです。
たとえば、スポーツの場合、選手がお互いに「バック・アップ」をして守り合います。
国会の場合は、国の大事な仕事をしますが、第一院だけでは、まちがいが起こるかもしれません。第二院が第一院を「バック・アップ」することで、まちがいがないように守ることができるのです。
国会は、双方の「バック・アップ」ではありません。主な働きをするのは「第一院」で、第二院は、第一院の「バック・アップ」をします。
そのため、第一院は、第二院よりも強い力を与えられているのです。
第一院 − 衆議院 (強い力をもつ)
日本の国会の第一院を「衆議院」といいます。
国会で、主な働きをする議院であり、第二院の参議院よりも強い力を与えられています。
強い力とは?
どのように強い力を持っているか、ということは、憲法で決められています。
一言でいうと、衆議院と参議院との意見が違ったときには、衆議院の方の意見が通るようになっている、ということです。
任期 − 4年です。
衆議院の選挙は、4年毎に行なわれます。衆議院の議員は、4年間務めるということです。
解散 − あります。
「衆議院の考えが国民の考えを正しく表していない」と内閣が考えたときなどには、内閣は、国民の意見を知るために、いつでも天皇陛下に申し上げて、衆議院の選挙のやり直しをしていただくことができます。
これを衆議院の「解散」といいます。
そうして、この解散のあと選挙がおこなわれ、国民が、どういう人を自分の代表に選ぶかということによって、国民のあたらしい意見が、あたらしい衆議院にあらわれてくるのです。
衆議院の力が強い理由
衆議院の方に強い力があるのはなぜでしょうか。
国会が国民の考えを正しく表していない場合に解散できること、そして、国民のあたらしい意見が国会にあらわれることなどが挙げられます。
解散の有無
- 衆議院は、解散できます。−あたらしい国民の意見が反映されます−
- 参議院は、解散できません。−あたらしい国民の意見が反映されません−
このようにしてみると、衆議院のほうが、参議院よりも、そのとき、そのときの国民の意見を、よく映しているといわなければなりません。
そこで、衆議院の方に、参議院よりも強い力が与えられているのです。
第二院 − 参議院
日本の国会の第二院を「参議院」といいます。
参議院は、「衆議院をバック・アップ」する働きをもつ議院です。
参議院は、衆議院を「バック・アップ」するだけの働きをするので、衆議院のほうが、参議院よりも強い力を与えられています。
強い力を持つ衆議院を「第一院」というのに対し、参議院は「第二院」といいます。
任期 − 6年です。(3年毎に半数交代)
参議院は、議員が6年間務めることになっています。そして、3年毎に半分ずつ選挙をして交代します。
解散 − ありません。
衆議院のように、解散、ということがありません。
国会の種類と召集
国会には、3つの種類があります。
「常会」、「臨時会」、「特別会」です。
また、国会を開くために、国会議員を呼び集めることを「召集する」といいます。
常会 − 国会の通常の会議
日本の国会は、年中開かれているものではありません。
しかし、毎年1回は、必ず開くことになっています。それを「常会」といいます。
会期
国会が開かれている期間を「国会の会期」といいます。
常会の会期は、150日間と決まっています。
国会の会期は、必要のあるときは、延ばすことができます。会期は、国会が自分で決めます。
臨時会 − 常会の他に開かれる臨時の国会
常会の他に、必要のあるときは臨時に国会を開きます。
これを「臨時会」といいます。
会期
臨時会の会期は、国会が自分で決めます。
特別会 − 衆議院解散、選挙後に新しく開かれる国会
衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、あたらしい国会が開かれます。これを「特別会」といいます。
会期
特別会の会期は、国会が自分で決めます。
召集 − 国会を開く
国会を開くには、国会議員を呼び集めなければなりません。
これは、国会を「召集する」といい、天皇陛下がなさるのです。召集された国会は、自分で開いて仕事を始め、会期が終われば、自分で国会を閉じて、国会は、一時休むことになります。
国会の仕事 −立法−
国会は、「立法」という仕事を受け持っています。そのため、国の規則は、すべて国会がつくります。
国会は、唯一の立法機関です。
あたらしい憲法では、国の規則は「国会だけがつくる」ということにしました。これを「国会は唯一の立法機関である」といいます。
「唯一」とは、「ただ一つ」という意味で、「他にはない」ということです。
「立法機関」とは、国の規則をつくる役目のある機関、ということです。
国会のつくる国の規則を「法律」といいます。
「国民の選んだ代表者が、国会で国民を治める規則をつくる」、これが民主主義の建前です。
国会以外の機関が国の規則をつくる場合は?
国会以外の他の機関が、国の規則をつくってもよい場合は、憲法で一つ一つ決めています。
法律 − 国会のつくる国の規則
「法律」とは、国会のつくる国の規則です。
国会は、国民が選んだ議員の集まりなので、国民の意見が一番よくわかっています。
そのため、国の規則は、なるべく国会でつくるのがよいのですが、国会で法律をつくるのには、色々手続きが必要なので、あまり細々した規則までつくることはできません。
あたらしい憲法は、ある場合においては、国会でない他の機関、例えば内閣が、国の規則をつくることを許しています。
これを「命令」といいます。
命令
「命令」とは、内閣などの国会ではない機関が、国の規則をつくることを許可していることをいいます。
あたらしい憲法において、国会のつくる国の規則(法律)の中で、「これこれのことは命令で決めてもよろしい」と許されています。
しかしながら、国の規則(法律)は、なるべく国会でつくるのがよいのです。
国会のもう1つの役目
国会には、国の規則をつくることの他に、もう1つ大事な役目があります。
「監督」です。
監督
「監督」は、内閣や、その下にある国のいろいろな役所の仕事のやり方を監督することをいいます。
これらの役所の仕事は「行政」という働きです。ですから、国会は、行政を監督して、まちがいのないようにする役目をしている、ということです。
こうすることで、「国民の代表者が国の仕事を見張っている」ことになるのです。
これも、民主主義の国の治め方であります。
衆議院議員選挙と参議院議員選挙
衆議院も参議院も、ともに国民全体の代表者です。衆議院議員も参議院議員もみな、国民が国民の中から選びます。
衆議院の方は、議員が466人、参議院の方は、250人あります(※1)。この議院を選ぶために、国を「選挙区」というものに分けて、この選挙区に人口にしたがつて議員の数を割りあてます。
したがって、選挙は、この選挙区ごとに、割りあてられた数だけの議院を選んで出すことになります。
投票前の心得、確認事項
投票する前には、
- 賛成意見、反対意見があることを知り、
- 集会場へ行ったり、雑誌を読んだり、ラジオや新聞、本で情報を収集したり、
- 掲示板を見たり、配られるビラを読んだり、など
よく判断して自分の考えを決めましょう(※4)。
選挙の流れと、してはいけないこと
議員を選挙するには、選挙の日に投票所へ行き、投票用紙を受け取り、自分のよいと思う人の名前を書きます。(候補者以外の他の人の名前を書いてはいけません)
それから、その紙を折り、鍵のかかった投票箱へ入れるのです。
この投票は、非常に大事な権利です。
選挙する人は、皆、自分の考えで誰に投票するかを決めなければなりません。
決して、品物や利益になる約束で説き伏せられてはなりません。
秘密投票
この投票は、秘密投票と言って、誰を選んだかをいう義務もなく、ある人を選んだ理由を問われても答える必要はありません。
棄権
選挙に行かないのは、この、大事な権利を捨ててしまうことであり、また、大事な務めを怠ることです。
選挙に行かないことをふつう、「棄権」といいます。
これは、権利を捨てるという意味です。
国民は、棄権してはなりません。
選挙権
日本国民は、20歳以上の人は、誰でも国会議員や知事市長などを選挙することができます(※2)。
これを「選挙権」といいます。
選挙権の歴史
わが国では、長い間、男だけがこの選挙権を持っていました。
また、財産を持っていて税金をおさめる人だけが、選挙権を持っていたこともありました。
いまは、民主主義のやり方で国を治めてゆくのですから、20歳以上の人は、男も女も、皆、選挙権を持っています(※2)。
普通選挙
このように、国民が、皆、選挙権を持つことを「普通選挙」といいます。
あたらしい憲法は、この普通選挙を、国民の大事な基本的人権として認めているのです。
普通選挙は国民の大事な基本的人権
しかし、いくら普通選挙といっても、子どもや気がくるった人まで選挙権を持つというわけではありませんが、とにかく、男女人種の区別もなく、宗教や財産の上の区別もなく、皆が等しく選挙権を持っているのです。
被選挙権
日本国民は、誰でも国会の議員などになることができます。
男も女も、皆、議員になれるのです。
これを「被選挙権」といいます。
しかし、年齢が、選挙権のときと少し違います。
年齢
衆議院議員になるには25歳以上、参議院議員になるには、30歳以上でなければなりません(※3)。
被選挙権の場合も、選挙権と同じように、誰が考えても「いけない」と思われる者には、被選挙権がありません。
候補と推薦
国会議員になろうとする人は、自分で届け出て、「候補者」というものになります。
また、自分がよいと思う他の人を「候補者」として届け出ることもあります。これを候補者を「推薦する」といいます。
締め切り
候補者を届け出るのは、選挙の日の前に締め切られます。
投票をする人は、候補者の中から、自分のよいと思う人を選びます。
当選
投票の数の多い候補者から、議員になれます。
これを「当選する」といいます。
改めて民主主義とは
民主主義は、国民全体で国を治めてゆくことです。
そして国会は、国民全体の代表者です。
国会議員を選挙することは、国民の大事な権利で、また、大事な努めです。
国民は、ぜひ、選挙に出てゆかなければなりません。
国会を知る権利
このように、国会は、国民が選んだ議員が集まり、国のことを決めるところですが、他の役所と異なり、国会で、議員が、国の仕事をしている有様を、国民が知ることができます。
国民は、いつでも、国会へ行って、これを見たり聞いたりすることができるのです。
また、新聞やラジオにも国会のことが出ます。
国会はいつでも、国民に知れるようにして、仕事をしなければなりません。
国会での仕事は、国民の目の前で行なわれます。
憲法は、国会はいつでも、国民に知れるようにして、仕事をしなければならない、と決めているのです。
これは、とても大事なことです。もし、まれな場合ですが秘密に会議を開こうとするときは、難しい手続きがいります。
これで、どのように国が治められてゆくのか、どんなことが国で起こっているのか、国民の選んだ議員が、どんな意見を国会で述べているかというようなことが、皆、国民に分かるのです。
国の仕事の正しい明るいやりかた
国の仕事の正しい明るいやり方は、ここから生まれてくるのです。
国会がなくなれば、国の中が暗くなるのです。
民主主義は明るいやり方です。
国会は、民主主義にはなくてはならないものです。
国は旧字体の「國」、条は旧字体の「條」、戰は旧字体の「戰」、応は旧字体の「應」、与えるは「與える」、争いは「爭い」、気は旧字体の「氣」から変更しています。
※1:「衆議院」ホームページによると、2026年現在の衆議院の定数は465名、参議院の定数は248名となっています。(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_kousei.htm)
※2:2026年現在の選挙権の年齢は18歳です。
※3:「総務省」ホームページによると、現在の被選挙権の年齢は、衆議院議員満25歳以上、参議院議員満30歳以上、都道府県知事満30歳以上、都道府県議会議員満25歳以上、市区町村長満25歳以上、市区町村議会議員満25歳以上、となっています。(https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo02.html)
※4:この当時の情報入手の方法が記載されていますが、現在は、他にもテレビやインターネット、その他様々な情報の入手方法があります。
※あたらしい憲法発行当時と現在の相違を詳細に調べていないため、現在の憲法とは、名称や言い回しなどが異なる部分があるかもしれません。

